人と触れ合うこと

Chapter1

 

周りの人と関わらずに生きてきた。

 

人に嫌われたくない気持ちに支配されていて、高校の頃までの私の心は、自分から、そして他人から監視されている中で生きていた。

周りに馴染むために、自然に溶け込むために心血を注いだ。

 

大学に行って、理系の、私みたいな人はけっこういるんだなと知って、少しだけ楽になった。

運動部だった私は、あいつらよりはマシだ、とか強がって生活していた。

そんな中でも傷つくことを極端に恐れて、1人を好んで行動していた。

 

シンエヴァで出てきた碇ゲンドウの独白は、ほんとうに私そのもので辛かった。

けれども私だけではないのだ、という気持ちにもさせてくれた。

親戚の家の描写とか。

 

今思うこと。

社会人になって思うのは、ああ、俺は俺のままで良いのかもしれないってことだ。

口数の少ない、話題を振れない、自分の興味のある話しかできない、つまらない人間だけれども

どんな自分だって、最低限常識がある人間であれば、みんな普通に接してくれるらしい。

最近そう思った。

Rさんからの電話でそう思った。

むかしは、なんで話を聞いてやらないといけないんだ、と思っていたけど、そうじゃないんだな。 

 

そもそも普通の人ってどこにいるんだろうか、とも思う。

 

 

Chapter2

 

女性からいつも電話がかかって来る。

 

魅惑的な電話ではない。まったくそれ以外の内容だ。

電話好きだった元彼女、そんな彼女の姉、高校の部活のマネージャー、妹、東京のともだち。

 

私から電話をかけたいと思ったことはない。

男はみんな電話がそんなに好きじゃないはずだ、そう思っている。

 

彼女たちはどうして電話をするのだろう。かけてくるのだろう。

 

ありがたいことに、聞き上手とはよく言われる。

けれど、接した人なら誰でも、私がそんなに話好きな人間でないのはわかると思う。

 

自分の話を聞いて欲しいんだ。

そう思って聞いているが、この時私は2種類の感情を混ぜ合わせている。

 

一つは、嫌われたくない気持ちから、それを態度に出してしまう。

明るい性格ではないが、無理に明るい声をだしてしまう。

やりすぎると、相手に不快感を与えてしまう。

その恐怖と常に戦いながら、声帯を震わせる。

 

バレたら、相手は怒ってしまうのではないか。

「どうして私の話をちゃんと聞いてくれないの」

そんな声をつねに自分に浴びせながら、私は相槌を打つ。

 

だから、電話はどっと疲れる。

 

 

二つ目は、話を聞いてあげることで楽になって欲しいとか、メサイアコンプレックスに似たものだ。

話を聞くことには才能がいる。

天才的に上手い人は、聞くだけでストレスなんかぶっ飛ばしてしまう。

私自身、そんな天才にぶっ飛ばされた経験があるから、いまここにいる。

救われた、たった2時間の記憶が私の人生を形作っている。

 

相手を癒せる人になりたい。

私が救われたように、きつい思いをしている人が、本当に楽になるのなら、何時間でも話を聞く。

電話をかけて来る人は自分からきつい思いを吐き出せる人で、とても健康的なので良いと思う。

問題はそうでない人で、自分から助けを求めることがでいない人。

私もそうだから、こういう人こそ救いたい。

見渡して、そういう人がいた時は、人目につかないように声をかける。

生きていく上で、目標としているが、これがなかなか難しい。

そういう人を救ってあげたいし、私も周りを見渡そう、そう思う人が増えれば多くの人が救われるだろう。

 

毎日電話はちょっときついけど、本当にしんどかったらいつでもかかってこい。

そう思っている。