ギタリスト
僕が小説を書くなら、ギタリストを追っかけている主人公にしたい。
追っかけまではしなくとも、好きなギタリストがいる設定だ。なにかうまくいかない時の特効薬としてギタープレイを見にいく主人公。
ギタリストのモデルは、とあるバンドのギタリストだ。
フェンダーのジャズマスターを愛用していて、その激しいピッキングから木材にまでダメージがある。
きっと主人公が好きなのは、ソロ中のスポットライトが、激しく揺れうごくギターボディに反射されて幻想的になるあの瞬間だ。主人公とギタリスト、そして轟音。断罪的な音は世界を分断して、主人公とギタリストの空間が生まれる。
良いギタリストを見て、よく「ギターが体の一部になっている」と表現するが、このギタリストは全く異なる。彼女の前ではギターはただの木片と成り下がる。彼女という人間を表現する、所詮道具に過ぎない。ギターはその役目を精一杯果たそうと唸り続けて、誰の耳にも捉えきれない轟音となる。
死ぬまでには見てみたいギタリスト。