小説の書き出し①

小説の書き出しは自己紹介と同義である。

 

新しい小説を読む時の感動、すなわちその小説の良し悪しに大きく影響するものだ。

 

もちろんその限りでないのは理解しているが、新しく読み始める時はいつだって気にしてしまう。

そんな好きな書き出しを、何回かに渡って書いてみようと思う。

 

 

「村は死によって包囲されている。渓流に沿って拓けた村を、銛の穂先の三角形に封じ込めているのは樅の木だ。

樅の樹形は杉に似て端正、しかしながらいくぶん、ずんぐりとしている。・・・」

小野不由美屍鬼から。

 

「渓流に沿って拓けた村を」、流線型を思わせるこの無駄のなさで、抵抗をなくした私は、推進力を得てぐいぐい進んでしまう。

「〜端正、」と単語で区切るやり方も、私の文章感に大きな影響を与えている。

 

この三文だけを取っても、影響の大きさに驚いてしまう。

 

 

毎日毎日、こんなに本ばかり読んでいて良いのだろうか・・・。