とある海藻
綺麗な暖簾を押す。
僕には特別な人ではない。
しかし、自分に向けられた思いにはしっかり向き合わなければ、という思い。
それは自分が他人に気持ちを向けた経験があるから、そう思うのかもしれない。
暖簾は風に揺れている。
その人は僕にとっては特別な人だからか
逃げずに向き合って欲しかったからか
その状況から抜け出したいだけなのかもしれない
暖簾に手応えはない。
半年も同じ状況だった気がする、もっと多いかもしれない。
自分の中で勝手にその気になっていただけかもしれない。
暖簾はこちらに向けていない裏面も綺麗だ。
僕はそれを見て見ぬ振りをする。
この気持ちを何回経験しただろうか
たった一人相手に
自分でも分かっているのに
暖簾は風に綺麗に踊るだけで、こちらにはまったく興味がない。
頑固だと言われてウッとなる。
本当は気づいていたのかもしれない。
周りからの声でその気になっていただけかもしれない。
暖簾は光を反射して、たまに僕だけに綺麗な姿を見せる。ただの気まぐれなのに。
行動に義務感を感じてしまう。
無視できないほどその疑問は大きくなっていく。
本当は好きじゃないのかも。
暖簾を押し続けるのももう止めたい。
やっとの思いでご飯まで辿り着いたのに、その瞬間嫌な気持ちになってしまった。
暖簾をみる、離れた距離から。
もう押したりはしたくない。