メランコリー

勘定を済ますとレストランから外へ出た。そしてますます美しいものとなりつつあったメランコリーの気分に満たされて通りを歩きまわった。テレザとは7年一緒に過ごした。そして今、その年月は暮らしたときより思い出の中でいっそう美しいことに気がついた。

 

彼とテレザとの愛は美しくあったが、世話のやけるものであった。絶えず何かをかくし、装い、偽り、改め、彼女をご機嫌にさせておき、落ち着かせ、絶えず愛を示し、彼女の嫉妬、彼女の苦しみ、彼女の夢により告訴され、有罪と感じ、正当性を証明し、謝らなければならなかった。この苦労が今や消え去り、美しさが残った。

 

I-14

存在の耐えられない軽さ

ミラン・クンデラ